2025年9月に社員研修としてグランドセイコースタジオ雫石を訪問致しました。
グランドセイコーは「クォーツ」「スプリングドライブ」「機械式」の3つのムーヴメントを自社開発・製造しております。「クォーツ」「スプリングドライブ」は長野県塩尻にある「信州 時の匠工房」にて製造されており、
機械式は今回訪れた岩手県雫石の「グランドセイコースタジオ雫石」にて製造されております。
☆グランドセイコースタジオ雫石☆
アクセスはJR東北新幹線盛岡駅よりタクシーで約30分、JR雫石駅からはタクシーで約10分の場所にあります。1970年に岩手山を望む美しい自然の中にひっそりと佇む雫石町に盛岡セイコー工業(株)が設立され以来、機械式腕時計を製造し続け、グランドセイコー誕生60周年の節目となる2020年、新国立競技場設計を手掛けた建築家・隈研吾氏による設計で「グランドセイコースタジオ雫石」がオープン致しました。

やわらかい自然光も差し込む木造建築でありながら、究極の精度を誇る機械式腕時計を組み立てる環境を両立したクリーンルームは世界でもまれな建築であり、最近ではご来場者の約30%が海外からのお客様と世界からの注目度も高いことが伺えます。

正面入り口の木造屋根は大きな空に伸びており、お客様を両手を広げてお出迎えをしているイメージで設計されたそうで日本のおもてなしの美学を感じられる作りになっています。

スタジオ入口には初代グランドセイコーやブランドの歴史、機械式腕時計を分解したパーツなどの展示コーナーがございます。

展示の中にはグランドセイコー愛好家では有名な通称「じゃがいも」と呼ばれているムーヴメントも展示されています。こちらは1967年機械式時計の精度を競うスイス・ヌーシャテル天文台コンクールにて企業賞部門2位を獲得したムーヴメントでケース内部のムーヴメントを覆う形がじゃがいもに似ている事で愛好家の間ではそう呼ばれているそうです。
展示コーナーを抜けると機械式ムーヴメントの組み立て工房がございます。
職人というと男性が多いイメージを持たれる方も少なくないと思いますが、工房内には非常に女性が多く、男女比が現在は約半分の比率で構成されているそうです。
「ムーヴメントの組立・調整」「ひげぜんまい調整」「歩度調整」「外装部品組立」の4チーム構成に分かれており、それぞれの作業を見学する事が出来ます。窓越しに見学者がいても目の前の世界に没頭し集中して作業を続ける姿は感動すら覚えます。そして職人さんを見ていて20~30代の若い方が多い印象でした。組立や調整の機能や知識を学べる部署が社内にあり、若手の人材育成にも力をいれているそうです。

それが社内制度の「プロフェッショナル人材制度」です。こちらは社内トップクラスの技術力として認定されるブロンズ、日本でトップクラスを誇る「シルバー」そして世界トップクラスを誇る「ゴールド」の3つに認定資格が分かれており、従業員が約700名いるそうですが現時点で認定されている職人は18名とかなり狭き門となっております。この制度はブロンズに認定されると自身の技術力向上はもちろん、その技術を継承していく為に後継者を指名して育成していくユニークな制度です。
そして、この資格は永久ではなく、2年ごとに更新されるそうで、後継者育成にも力を入れている事が伺えます。
まさに師匠と弟子の関係で日々技術の向上と継承が行われているので、グランドセイコーが存続し続ける限り腕時計を安心して愛用できます。
ちなみに現在はブロンズが10名、シルバーが3名、ゴールドが5名でゴールドクラスの職人さんは黄綬褒章を受章されておりまさに世界に誇るトップクラスの精鋭の皆様です。

工房内で職人が作業する机も特徴的でした。木目と漆塗りが美しく、金具には南部鉄器が使用された岩手の伝統工芸品「岩屋堂箪笥」が使用されています。地元愛と日本愛を感じられる工房の雰囲気は圧巻でグランドセイコーのフィロソフィー「THE NATURE OF TIME」の時計の本質と豊かな自然を感じられ、周囲の自然環境とクラフトマンシップあふれる時計工房が調和し、グランドセイコーの世界観を形にしたのが、まさに、このグランドセイコースタジオ雫石です。

自然との共生も掲げているのはグランドセイコースタジオ雫石だけでなく、スタジオのある盛岡セイコー全体での取り組みとなります。
一般的な工場・工房と比較すると建築物の敷地面積全体に対して植栽や花壇、樹木などの緑化施設の面積が占める緑化率が約37%と非常に多いのが特徴です。スタジオがある場所は御所湖から岩手山をつなぐ道筋にあり、動物の移動同線と地域の生態系を守るため、敷地の自然を保全活動を通じて残しております。なのでスタジオの敷地内にはカモシカやウサギなどの野生生物が現れる事もあるそうです。

そしてスタジオの傍らにはさまざまな生物が互いに支え合って暮らす空間「ビオトープ」があります。ここでは虫や小動物用のインセクトホテルが設置されており、また、雨水や井戸水に含まれる窒素を分解する自然ろ過を行う丘で浄化された水が貯められている人工池があります。



周辺の自然環境を守り、生態系の維持を目指す取り組みが感じられるのも特徴の1つです。

機械式グランドセイコーの聖地として人気のスタジオには、日本の四季を感じられる自然環境と共に生きながら、
長年、世代から世代へ受け継がれてきた職人の技によって機械式腕時計が生み出されています。
日本が世界に誇る「時の文化」が静かに息づく場所「グランドセイコースタジオ雫石」
見学は完全予約制となりますが、ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか?








