機械式時計の歴史において「発明者」は数多く存在します。
振り子時計を発明し機械式時計の父と称されるクリスティアン·ホイヘンス。
トゥールビヨンやミニッツリピーターなどの複雑機構を発明し「時計の進化を200年早めた」と言われる天才·アブラアン·ルイ·ブレゲなどが有名です。皆様もご存知の方が多いのではないでしょうか?
その中で、「複雑機構そのものを変えた時計師」は決して多くありません。その1人が「クルト·クラウス」です。

☆クルト・クラウスとは??☆
1934年、スイス·ザンクトガレン地方に生まれ、幼少期から鉄道模型を自作したりメカニカルなものを作ったりすることが大好きだったそうです。その後、ドイツ語圏にあるゾロトゥーンにある時計学校に4年間通い時計師の資格を取得。

1956年にIWCへ入社、以前コラム紹介したアルバート・ペラトンの見習いを経て設計者として独自の才能を発揮していきました。そして7年の年月をかけて永久カレンダーとムーンフェイズの付いた懐中時計のパーペチュアルカレンダーを作成。

1985年に「この世に存在しない時計を作る」という信念のもとに、当時では存在していなかった永久カレンダーとクロノグラフを搭載した傑作「ダ·ヴィンチ·パーペチュアル·カレンダー(Ref.3750)」を発表。
かつてアブラアン·ルイ·ブレゲが発明した永久カレンダー機構を「誰でも扱える永久カレンダー」として設計思想そのものを変えた革命機としてIWCの名を高めたモデルとなりました。
☆ちなみに永久カレンダーとは??☆
超複雑機構の1つに数えられ、月·日·曜日の調整を4年に一度の閏年まで計算しカレンダー調整を行う機構で、動き続ければ手動でのカレンダー修正が不要となる複雑機構です。
※採用しているグレゴリオ暦では閏年の例外規則が存在するため直近では2100年に修正が必要。
☆クルト・クラウスが起こした永久カレンダーの革命とは??☆

※1925年パテックフィリップ発表の永久カレンダーNo.97975
アブラアン·ルイ·ブレゲが発明し、1925年にパテックフィリップが世界初の永久カレンダー搭載腕時計を発表してきた伝統的な永久カレンダーは無数のレバーやスプリング、緻密な歯車を複雑に嚙み合わせる「レバー方式」が主流でした。これは職人の高度な手調整を必要とする「芸術作品」であり非常に繊細で、操作を一歩誤れば内部が破損してしますデリケートな存在でした。
1980年代以前の永久カレンダーは、
- 調整が極めて複雑
- 複数のプッシュボタン操作が必要
- 操作手順を間違えると破損
- ゆえに時計師以外が触れられない
などの問題点があったと言われています。

そこでクルト·クラウスは「複雑機構は日常で使えなければ意味がない」と考え、時計師が管理する神聖な永久カレンダーを日常生活で誰でも扱える永久カレンダーに昇華させました。

クルト·クラウスは複雑で壊れやすいレバー式を徹底的に見直し、「すべてを1つのリューズで同期させ、連動して動く歯車式のシステム」をゼロから構想。日付表示のリングにピンを立て、それが動くとすべてのカレンダーが切り替わるモジュール型を5年以上の歳月をかけて完成。驚くべきは当時これらの設計にはコンピューターが使われることなく机上の計算と手書きの設計図だけで完成させました。現代においては生成AIやスパコンなどでいとも簡単に設計や計算できてしまう事を手作業で完結させるのがどれほどの偉業かご理解いただけるかと思います。
☆クルト・クラウスの永久カレンダーの特徴は??☆

1985年発表のダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー(Ref.3750)
クルト·クラウスが発明した永久カレンダー機構は圧倒的な実用性と操作の簡便さにあります。日常で使える複雑機構として革命をもたらした特徴として主に3つございます。まずは、

1.リューズ1つですべて調整可能
従来の永久カレンダーは先にご説明の通り、月・日・曜日・ムーンフェイズの修正はそれぞれ個別にプッシュボタン等で操作が必要でした。そこでクルト・クラウスはそれらをすべてを1つの輪列で同期化させリューズ操作だけで調整を可能にしました。とは言えその構造にはある問題がありました。「2月」と「閏年」。通常カレンダーであれば31日サイクルだけを考えればよいですが、永久カレンダーは30日・2月28日・2月29日を記憶し閏年判定も必要になるため単純な歯車列では実現不可能でした。そこでクラウスは「48か月カム」を導入しました。
48カ月=4年、このプラグラムカムを組み込むことで「2月」と「閏年」問題を解決し完全制御することで可能になりました。この設計を当時コンピューターを使うことなく机上の計算で行ったというので驚きですね。

2.西暦4桁表示による視認性向上
クルト・クラウスの永久カレンダーの文字盤の特徴の1つに西暦表示がございます。100年に一度しか動かない「世紀スライド」を備え、さらに遠い未来のためにその世紀スライドパーツの交換用まで付属しているモデルもあり、私たちが生きてる間には活用されないパーツすら計算され付属することにロマンを感じると思います。毎年12月31日から新年を迎えるタイミングで西暦表示の切り替えも見て楽しめるのも永久カレンダーのオーナー冥利につきる点ではないでしょうか。

3.高精度なムーンフェイズ
IWCの永久カレンダーを語る上で欠かせないのがムーンフェイズの圧倒的な高精度です。
地球から見た月の満ち欠け周期(朔望月)は29.53059日。つまり新月から次の新月まで約29.53日となります。一般のムーンフェイズ機構は周期を29.5日として29.5×2=59として59歯のディスクを1日ずつ進めて
調整しています。しかし実際の周期は29.53059日ですので厳密には0.03日の誤差生じ、約2年6カ月で約1日の誤差が生じてしまいます。とはいえこれは決して低性能でなく現代でも非常に高い精度とも言えます。

そこでクルト・クラウスはこの59歯方式の歯車でなく複数の歯車を構成して非常に複雑な減速歯車などを組み合わせ29.53059日周期に回転速度を実際の月周期に極限まで近づけました。当時のモデルで精度誤差は122年で1日、現行モデルでは577.5年で1日という驚異的な精度を誇っています。
す。

さらに今年発表されたビック・パイロット・ウォッチ・パーペチュアルカレンダー・プロセット“プティ・プランス”に搭載されたIWC-ProSet®キャリバーではその誤差を1040年に1日の誤差まで高め大幅な躍進を遂げています。
また進化した点はもう1つ。クルト・クラウスが考案した永久カレンダーはリューズ1つで同期して操作ができ完璧に連動しているため、万が一日付を進め過ぎてしまった場合はリセットができず、現実の日付まで時間が追いつくのを待つか、IWCのテクニカルサービスにて修正してもうら必要があります。
新たなキャリバーではこの点に改良を加え、リューズによってカレンダー修正を前後に行えるようになりました。
クルト・クラウスが考えた「複雑機構をどう使ってもらえるか」この設計思想が脈々と現在まで受けつがれ、IWCのエンジニアリングにより永久カレンダーは芸術作品としてだけでなく実用時計として昇華させていたからこそ世界中の時計愛好家から特別視されるのだと思います。
☆さらなる高みを目指して受け継がれるクルト・クラウスの情熱☆

2012年に開発現場からはリタイアしたクルト・クラウスですが現在も後進の指導や若い時計師たちのサポートを続けており今年で93歳を迎えます。恩師アルバート・ペラトンからの口癖「良いね。でももっと良くならない?」という言葉から発明し生み出されたクルト・クラウスの永久カレンダー。その設計をベースにして現在のIWCの技術力の頂点を示すモデルが2024年に発表されたポルトギーゼ・エターナルカレンダーです。

永久という名前からずっとカレンダー調整が不要と思われがちですが、先程ご説明したグレゴリオ暦には例外規則がございます。
・4年に1度が閏年
・ただし100で割り切れる年は平年
・ただし400で割り切れる年は閏年
という例外規則が存在しますので、直近の2100年は閏年ではなくなります。
多くの永久カレンダーはこの例外に対応しておらず2100年3月1日に修正が必要になりますが、昨年発表されたこちらのエターナル・カレンダーはそのサイクルすら組み込まれています。
400年に1回転する特殊な歯車により例外規則をスキップすることで、理論上は西暦3999年までカレンダー修正が不要となります。ちなみになぜ3999年かというと4000年を閏年にするかどうかはまだ未定で3000年までに決定するみたいです。現在のグレゴリオ暦は3999年まで確定しています。子々孫々受け継いだ先にどうなるのか、想像もできない年月まで考え抜かれたエターナル・カレンダーは圧倒的な美しさと実用性で時計界を震撼させ、時計界のアカデミー賞とも称されるジュネーブ・ウォッチメイキング・グランプリ(GPHG)2024において、最高賞である「エギーユ・ドール(金の針賞)」を受賞しました。
ちなみに搭載するムーンフェイズは超高精度で220億通り以上の歯車の組み合わせをシュミレーションし、
実際の月の周期との誤差が4500万年に1日という天文学的精度の達成でギネス世界記録にも認定されました。
☆時計を使う人のために複雑機構を再設計したクルト・クラウス☆

クルト・クラウスが設計した永久カレンダーは単なる複雑機構という言葉だけで語ることができず、
・機械工学
・天文学
・暦学
・視認性設計
・実用思想
などが融合した工業芸術作品でもあります。
「複雑であること」と「使いやすいこと」との両立という難題に真正面から挑み、「良いね、でももっと良くならない?」という思いが現在のIWCに受け継がれ、さらなる高精度・実用性へと昇華され、まだ見ぬ未来の世紀までをも静かに正確に刻み続けています。
ぜひクルト・クラウスの魂と情熱が組み込まれた永久カレンダーを手にして、日々使うことで複雑機構の真髄を感じてみてはいかがでしょうか?
☆IWC オススメ パーペチュアルカレンダーモデル☆
ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 42
品番:IW344203
ムーブメント:82650 キャリバー IWC自社製キャリバー
サイズ:42.4mm
ケース:ステンレススティール
防水性:3.0 気圧
パワーリザーブ:60時間
価格:¥4,408,800(税込)
ポルトギーゼ・パーペチュアル・カレンダー 44
品番:IW503701
ムーブメント:52616 キャリバー IWC自社製キャリバー
サイズ:44.4mm
ケース:18Kレッドゴールド ケース
防水性:5.0 気圧
パワーリザーブ:168時間
価格:¥8,934,200(税込)
ポートフィノ・パーペチュアル・カレンダー
品番:IW344601
ムーブメント:82650 キャリバー IWC自社製キャリバー
サイズ:40mm
ケース:ステンレススティール
防水性:5.0 気圧
パワーリザーブ:60時間
価格:¥4,065,600(税込)
HF-AGE仙台店
HF-AGE(エイチエフエイジ)は、1985年6月創業の腕時計専門店です。
群馬県の高崎市と宮城県の仙台市の2カ所に拠点をおいています。
商品知識はもちろん、腕時計をこよなく愛するプロフェッショナルなスタッフの接客は、機械式腕時計が初めてのお客様、県外からのお客様にとっても素敵な時計選びの時間をご提供しております。
仙台で最高の時計をお探しの方は、ぜひ正規販売店であるHF-AGE仙台店へお越しください。
東北唯一のパテックフィリップの取り扱いを始め、IWC、ボーム&メルシエ、ボールウォッチ、などの機械式時計が並べられています。HF-AGEは取扱いする各メーカーの正規販売店です。
時計選びに集中できる上質な空間で、生涯を共にして頂ける時計をお選びいただけます。
所在地:宮城県仙台市青葉区国分町2丁目14-18定禅寺パークビル1F
電話番号:022-711-7271
営業時間:11:00~19:30
定休日:毎週水曜日
Google MAP








